虎口を脱する/虎口を逃れる

ここうをだっする

ここうをのがれる

【意味】

きわめて危険な場所や状態から逃れること。

【参考文献】

成語林』旺文社、『広辞苑』岩波書店、『大漢語林』大修館書店、『四字熟語の辞典』三省堂、ほか。参考文献の全リストはこちら

【猫的解釈】

保護された捨て猫ちゃん

捨てられ、さまよっていた猫。 この写真は、保護されて、餓死の危機を脱したとき。その後、里親様のところにもらわれて行きました。

御伽草子『二十四孝』より

御伽草子に『二十四孝』という話があります。親孝行で知られた24人を簡単に紹介したものです。

その中に、まさに虎口から生還した男の話がでてきます。ごく短いものですから、全編をここに書き出します。

以下、「日本古典文学全集36『御伽草子集』校注・訳者:大島建彦 小学館 ©1974」より。

「楊香(やうきゃう)」

深山逢白額 しんざんはくがくにあふ
努力榑腥風 ぬりきにせいふうをなす
父子俱無恙 ふしともにつつがなからん
脱身饞口中 みをさんこうのうちをまぬかる

楊香は一人の父を持てり。ある時、父とともに山中へ行きしに、たちまち荒き虎にあへり。楊香、父の命を失はんことを恐れて、虎を追ひ去らんとし侍りけれども、かなはざるほどに、天の御あはれみを頼み、「こひねがはくは、わが命を虎に与へ、父を助けて給へ」と、こころざし深くして祈りければ、さすが天もあはれと思ひ給ひけるにや、今まで、たけきかたちにて、取り食(くら)はんとせしに、虎、にはかに尾をすべて、逃げ退きければ、父子ともに、虎口の難をまぬがれ、つつがなく家に帰り侍(はんべ)るとなり。これ、ひとへに、孝行のこころざし深き故に、かやうの奇特(きどく)をあらはせるなるべし。

【口語訳】

深山逢白額・・・(深い山の中で白い額の虎に出あった。力を尽くして、ものすごい鼻息でかかてくるのを討ちとった。父子はともに無事で助かった。身をまっとうして、餌食をむさぼる口からのがれることができた。)

楊香は、一人の父をもっていた。ある時に、父とともに、山の中へはいったところが、たちまち荒々しい虎に出あった。楊香は、父の命を失うことを恐れて、虎を追い払おうといたしたが、それもかなわなかったので、天のご慈悲を頼み、「どうぞお願いですから、私の命を虎に与え、父を助けてください」と、深く心をこめ祈ったところが、さすがに天もかわいそうとお思いになったのであろうか、今まで、たけだけしい様子で、取って食おうとしていたのに、虎は、にわかに尾をすぼめて、逃げ去って行ったので、父子ともに、虎の口の難儀をのがれ、無事に家に帰りついたということである。これも、ひとへに、孝行の心持が深いために、このような不思議をあらわしたのにちがいない。

【雑学】

“虎口”の名が付く地名

熊本県菊池市龍門虎口。 ただし、読み方は“こく”だそうだ。

【文例】

曲亭馬琴(1767-1848年)「南総里見八犬伝

ここより追来る敵なければ、主従不思議に虎口を逃れて、その夜は白屋(くさのや)に宿りを投(もと)め、旦立(あさだち)の置き土産に、馬物具をあるじにとらせて、姿を窶(やつ)し、笠をふかくし、東西すべて敵地なれども、聊(いささか)志すかたなきにあらねば、相模路へ走りつつ、第三日にして三浦なる、矢取の入り江に着給ふ。

岩波文庫『南総里見八犬伝(一)肇輯巻之一 第一回 page22 ISBN:9784003022412

上記以外にも文中にてよく使用されている。

  • 肇輯 巻之一 第四回 「虎口を逃れて」page71 ISBN:9784003022412
  • 肇輯 巻之五 第十回 「虎口を脱れて」page175 ISBN:9784003022412
  • 第二輯 巻之三 第十五回 「虎口を逃れ給へかし」page258 ISBN:9784003022412
  • 第二輯 巻之三 第十六回 「虎口を逭(のが)れて」page275 ISBN:9784003022412
  • 第三輯 巻之四 第二十八回 「虎口を遁れ給ひき」ISBN:9784003022429 page141
  • ほか
舌を出した猫

同じネコ科でも、猫の口なら何をしても可愛い (*^_^*)

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