猫舌
ねこじた
意味
『広辞苑』(第六版)、岩波書店
(猫は熱い食物をきらうからいう)熱い物を飲み食いすることのできないこと。また、そういう人。
『日本語大辞典』(第二版)、講談社
猫のように熱いものを飲食できないこと・人。tongue too sensitive to heat
【参考文献】
『成語林』旺文社、『広辞苑』岩波書店、『大漢語林』大修館書店、『四字熟語の辞典』三省堂、ほか。参考文献の全リストはこちら
猫的解釈
(1)猫の舌は肥えているので、いつだってどんなときだって、「おいちーごはんをあげなきゃだめ」って意味にゃ!
(2)猫の舌には、なぜか、誰かほかの猫が食べているお皿が美味しく感じられるという意味もあるにゃ。ニンゲンにもいるでしょ?やたら人のお皿から「一口ちょーだい」ってもらいたがる人!
猫の舌について
猫って本当に熱いものが苦手なの?
猫に限らず、人間以外の動物はそもそも熱々なものを食べる習慣や機会がありません。火を使って調理するのは人間だけですからね。
猫が食事として最も好む温度は、体温程度といわれています。ネコは本来、新鮮な肉(獲物)を食べる純肉食動物だったのですから、当然でしょう。愛猫の食欲がないときは、体温程度に温めてあたえてみてください。食べてくれるかもしれません。
味はどのくらいわかるの?
【甘味】
猫の舌には甘みを感じる味蕾がほとんどなく、甘味は感じにくいと思われます。猫に甘いお菓子をあげるのは百害あって一利なし。甘さがわからない猫には無意味なばかりか、甘いものには意外なほど多くの塩も使われています。愛猫の健康のため、お菓子はぜったいに止めましょう。
【苦味、辛味】
猫は、本能的に毒性物質を識別するために、苦味や辛味に対する感覚が鋭く、苦いものや辛いものを避けます。苦い薬を飲ませようとすると、泡のようなよだれをダラダラ流して飲み込んでくれない猫さんって多いですよね。苦い薬はウェットフードで包むなど、工夫して与えましょう。
【酸味】
猫は、クエン酸やリン酸などのすっぱい味を好む傾向があります。
【旨味=アミノ酸やペプチド】
約20種類あるアミノ酸の中には、糖分などの甘味とは異なる、旨味としての甘みのあるもの(リジン、ロイシン、システインなど)があり、これらの味を猫も好みます。また、半消化状態の肉などを好むのは、アミノ酸やペプチドが含まれるほか、糖とアミノ酸やペプチドが反応して、旨味成分ができるからです。
【塩味】
猫は塩味にはあまり敏感ではありません。また、体の構造上、過剰な塩分は腎臓に悪影響を与えます。人間用に調理された食べ物はほとんどが猫には塩分過剰。猫にはキャットフードを与えましょう。
参考文献
ペットビジネスプロ養成講座2『フードアドバイザー』。資格を取る取らないは別として、一般飼い主にとって役に立つ情報やためになることが満載の一冊です。お勧めです。
雑学
曲亭馬琴(1767-1848年)『南総里見八犬伝』
江戸時代の作品ですが、「猫舌」という言葉が出てきます。人相見が、人の顔や様子などを、獣や鳥の形たとえることについて論じた場面です。
その獣形禽形(けもののかたちとりのかたち)に、似たるを以(もって)断るものは、譬喩(ゆひ)してその義を示すのみ。人の形局(かたち)を獣の如く、禽の形に似まくするとも、同じからざることを得ず。《中略》鳩胸、猫舌、猿眼(さるまなこ)、俗語といへども皆しかなり。
第八輯 巻之七 第八十八回 ISBN:4003022459 page123
猫の舌の写真
舌をだした猫の写真ばかりを集めたページを作っています。お暇なときに、ぜひ!
文例
神坂次郎『猫大名』
「・・・羮(あつもの)などと云っても、将軍家の兎汁の正体は」
ISBN:9784122051096, p.57
微少(わら)いながら藤蔵は、主税の耳もとで、
「冷めて、冷え切った吸い物」
だと、低声(こごえ)でいう。
「それぁまた、どうして」
「将軍様は代々、猫舌よ」
「ええっ」