猫かわいがり

猫可愛がり。ねこかわいがり

意味

『広辞苑』第六版 岩波書店

猫をかわいがるような甘やかした愛し方。

『日本語大辞典』第二版 講談社

甘やかして、かわいがること。盲愛。doting on ; blind love

参考文献

広辞苑』岩波書店、『日本語大辞典』講談社、『大漢語林』大修館書店、『成語林』旺文社、『四字熟語の辞典』三省堂、『広辞苑』岩波書店、『ランダムハウス英和大辞典』小学館、ほか。参考文献の全リストはこちら

猫的解釈

猫は、甘えるのが仕事。ニンゲンは、猫をかわいがるのが仕事。

仕事熱心な猫と、仕事熱心な人間があわさると、世の中は平和ににゃりましゅ。

甘える猫
茶トラ白にママをとられて、後ろで睨む、嫉妬に狂った白猫の目が怖い・・・笑

猫を文字通り「猫かわいがり」した天皇や貴族たち

猫を溺愛する人は世に多いですが、日本史に登場する最初の溺愛家といえば宇多天皇(867~931年、第59代天皇在位887~897年)でしょう。と、これは猫好きの間では超有名な話。

宇多天皇が在位中に書き残した『寛平御記(宇多天皇御記)』に、愛猫への溺愛ぶりがうかがえる文章があります。

寛平元年二月六日。朕閑時述猫消息曰。驪猫一隻。太宰少貳源精秩滿來朝所献於先帝。愛其毛色之不類。餘猫猫皆淺黑色也。此獨深黑如墨。爲其形容惡似韓盧。長尺有五寸高六寸許。其屈也。小如秬粒。其伸也。長如張弓。眼精晶熒如針芒之亂眩。耳鋒直竪如匙上之不搖。其伏臥時。團圓不見足尾。宛如堀中之玄璧。其行步時。寂寞不聞音聲。恰如雲上黑龍。性好道行暗合五禽。常低頭尾著地。而曲聳背脊高二尺許。毛色悅澤盖由是乎。亦能捕夜鼠捷於他猫。先帝愛翫數日之後賜之于朕。朕撫養五年于今。毎旦給之以乳粥。豈啻取材能翹捷。誠因先帝所賜。雖微物殊有情於懐育耳。仍曰。汝含陰陽之氣備支竅之形。心有必寧知我乎。猫乃歎息舉首仰睨吾顔。似咽心盈臆口不能言。

宇多天皇は、「私の猫は、そこらの猫とぜんぜん違う!真っ黒な毛はまるで玄璧(黒い宝石)みたいだし、歩く姿は黒龍みたい♡毎日、希少な乳粥をあげているんだよ♡そんな私の気持ち、ちゃんとわかってくれているよね?♡♡」と、デレデレにべた褒めです。まさに猫かわいがり。

漢文で難しいですけれど、すばらしい口語訳がこちらのブログにありますのでご覧ください。

さるねこふみ別館 > 宇多天皇の黒猫(寛平御記)

見やすいマンガに意訳されたのがこちら。あの有名な「くるねこ大和」ブログ。

くるねこ大和寛平御記

なんか、宇多天皇ご本人までかわいらしく思えてきませんか?

宇多天皇の他には、一条天皇の猫も有名です。その猫は「命婦のおとど」と呼ばれ、これは日本史上に残る最古の猫の名前となります。清少納言『枕草子』にその溺愛ぶり描かれています。

『枕草子』といえば、ライバル紫式部の『源氏物語』。その『源氏物語』にも猫を溺愛する男がでてくるのが面白いですね。その男の名は「柏木」。光源氏の妻、女三の宮に横恋慕し憐れな最期をとげる男です。詳細はこちらのページをご覧ください。

以上、日本史上最古の「猫溺愛者」、最古の「猫の名前」、最古の「猫溺愛小説」のご紹介でした。

文例

曾野綾子『ぜったい多数』

「僕は佐々木氏の娘を誘拐しようと思うんだ。佐々木氏は、千香子というその娘を猫かわいがりにかわいがっている。僕が、その娘に近づいてね、あらゆる手段でもてあそんで、そして無責任にほうり出したら、その時初めて、佐々木氏は、彼が僕の過程に対してした行為はどのようなものだったかということがわかると思うんだ。」
「もてあそぶっていったいどういうふうにするつもりなの?」

ISBN:9784167133221, p.153

宮尾登美子『もう一つの出会い』

「ふたたび『母のない子と–』に戻って、私は読みながらいつもおとら小母さんに壺井さんを重ね合わせてしまうのです。右文もそうですが、このチロちゃんも決して小母さんに狎れすぎず、ちゃんと自立の精神を持ち、小母さんもまたべたべたと猫かわいがりはしていません。これは実であろうと嘘であろうと母子関係にはとても大切なことで、・・・』

ISBN:4101293023, p.126

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