虎嘯けば谷風至る/虎嘯けば風生ず
とらうそぶけばこくふういたる
とらうそぶけばかぜしょうず
【意味】
「谷風」は、東風、春風のこと。
虎がほえると谷風が起こるということから、立派な君主のもとにはすぐれた臣下が現れる。
また、英雄が出現して天下に風雲の起こることのたとえ。
【参考文献】
『成語林』旺文社、『広辞苑』岩波書店、『大漢語林』大修館書店、『四字熟語の辞典』三省堂、ほか。参考文献の全リストはこちら
【猫的解釈】

トロ嘯けば子猫至る
【雑学】
出典
「淮南子(えなんじ」天文訓(てんもんくん)
虎嘯きて谷風至り、竜挙がりて景雲属(あつ)まる。(=太平をもたらすというめでたい雲が集まる。)
吼えるネコ科とは
ネコ科は現在、5属36種に分類されている (学者によって分類の仕方が異なる場合もある)。
●ネコ属 Felis=イエネコ Felis catus はここに属す。 ほか、ベンガルヤマネコ、ジャングルキャット、オセロット、ピューマ、など。
●オオヤマネコ属 Lynx=学者によっては上のネコ属と ひとまとめに分類する場合も。オオヤマネコ、ボブキャットなど。
●ヒョウ属 Panthera=ライオン、トラ、ジャガー、ヒョウ、ユキヒョウ
●チーター属 Acinonix=チーター
●ウンピョウ属 Neofelis=ウンピョウ
トラはライオン・ジャガーなどとともにヒョウ属に属する。 一番大型のネコ科たちである。
トラやライオンに比べ体の小さなヒョウがこの属を 代表する栄を担っているのは、生息分布が一番広いから。
いずれも丸い耳と丸い瞳孔を持ち(イエネコの耳は三角で瞳孔は縦楕円形)、 すごい声で吼えることができる。
それに対し、小型ネコ類は 「 舌根部にあるU字型の小さな骨、すなわち舌骨が完全に骨化しているために 自由に動かすことができず、吠えられないのだという。」 (『イリオモテヤマネコの百科』p129)
ザラザラの舌、自由に出し入れできる爪などは、イエネコと同じだ。
なお、トラは次の8亜種に分類される。
- アモイトラ、カスピトラ、バリトラ(いずれも絶滅)
- ジャワトラ(おそらくすでに絶滅)
- スマトラトラ、マレートラ(いずれもきわめて危機的状況)
- シベリアトラ、ベンガルトラ(危機的状況)
【参考文献】
●『週刊朝日百科 動物たちの地球49 哺乳類Ⅱ トラ・ライオン・ヤマネコほか』 朝日新聞社
文例
曲亭馬琴(1767-1848年)『南総里見八犬伝』
(前略)比叡山下風(ひえいやまおろし)時なくて、颯(さ)と音し来る勢ひに、河原の沙石(いさご)を吹あげて、黒白(あやめ)も別(わか)ずなりしかば、夥兵們(くみこら)いよいよ驚慌(おどろきあわ)て、「虎嘯けば風起るといふ、古語は是(これ)なめり。那(かの)暴虎の出来ぬ間に、逃げよ逃げよ」と悄喚(ひそめ)きて、闇(くら)きに紛れて皆共侶(みなもろとも)に、近江路を投(さ)して走りつつ、(後略)
第九輯 巻之二十八 第百四十四回 ISBN:9784003022481 page196