猫撫で声

ねこなでごえ。

意味

『広辞苑』第六版 岩波書店より

猫をなでるように、当たりをやわらかく発する声。相手をなつかせようとする時の声。一説に、猫が人になでられた時に出す声とも。「――で話しかける」

参考文献

広辞苑』岩波書店、『日本語大辞典』講談社、『大漢語林』大修館書店、『成語林』旺文社、『四字熟語の辞典』三省堂、『広辞苑』岩波書店、『ランダムハウス英和大辞典』小学館、ほか。参考文献の全リストはこちら

猫的解釈

ニンゲンどもに、言っとくけどね!

猫は敏感な動物なのにゃ。猫嫌いが、いくら「猫撫で声」を出しても、猫は騙されニャい。猫撫で声で本心は隠せないからニャ。猫は、人語の単語ひとつひとつまではわからないけど、その分、本当の気持ちがわかっちゃうんだよ。

「猫撫で声」に騙されるのは、人間だけニャ。あほニャ。

『枕草子』と猫撫で声

平安時代に書かれた清少納言の『枕草子』。そこに「にげなきもの」という章があります。「にげなきもの」とは「似つかわしくないもの、みっともないもの」というような意味です。髪の毛のよくない人が白い綾の着物を着ているのとか、下手な字を赤い紙に書いているのとか、清少納言らしい観察眼でいろいろ並べられているのですけれど、その中に、

・・・{中略}・・・おいたる男のねこよびたる。・・・{後略}

第五二段

という一文があります。「おいたる男」は「年老いた男」の意で間違えようがありませんが、「ねこよびたる」の口語訳は確定はしていないようで、

  1. 文字通り単純に、猫を呼んでいる
  2. 猫撫で声を出している
  3. 寝こ(ろぶ)+呼ぶで、寝たまま呻いている

などの説があるようです。

とはいえ、私が調べた限りでは「年老いた男が猫撫で声を出している」と訳されることが多いようで、当然、超絶猫派の私もそう信じています!

当時の宮殿をはじめ貴族の間で猫が好んで飼育されていたのは御存知の通り。となれば、清少納言がいいたかったのは、

いつもは偉そうに文句しか言わないクソじじいが、子猫がちょこちょこじゃれて遊ぶのを見て思わず「お~よちよち、いい子でちゅね~」と声が裏返っちゃった、どこからそんな声がでてくるのよ、あー可笑し、らしくなぁい!

とかじゃないかと(笑)。爺いが寝ころんで呻いているより、猫撫で声で猫ちゃんを愛でている様子のほうが、はるかに面白いし「似つかわしくない」じゃないですか。ねえ?

文例

若竹七海『古書店アゼリアの死体』

「相澤さん、あなたね」
駒持が猫なで声を出した。
「風邪ひいたみたいだなあ」
「誰のせいだと思ってんのよ」

ISBN:9784334735463 p.31

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