窮鼠猫を噛む
きゅうそねこをかむ
【意味】
ネズミでも追いつめられれば猫に噛みつくことがある。
絶体絶命の窮地に立たされれば、弱い者が強い者にたてついたり、負かすこともあるということ。
【出典】
『塩鉄論(えんてつろん)』詔聖(しょうせい)
死して再びは生きざれば、窮鼠狸(=野猫)を囓む。
【類】
窮冠は迫ること勿れ きゅうこうはせまることなかれ
獣窮まれば即ち噛む じゅうきわまればすなわちかむ
【外国では】
(英)Despair gives courage to a coward.直訳:絶望は臆病者に勇気を与える。
↑この画像、「窮鼠猫を噛」んだ状況ではありません。このチビ猫はいつも威張っています。この大猫はいつも譲っています。
【参考文献】
『成語林』旺文社、『広辞苑』岩波書店、『大漢語林』大修館書店、『四字熟語の辞典』三省堂、ほか。参考文献の全リストはこちら
【猫的解釈】
「いまどきのネコは、ネズミにゃんか、とらにゃいもんね。だから、こんにゃことわざ、しーらにゃいっ!(ネズミこわいもん)」
【雑学】
ネコ 対 ラット
ライハウゼンの大著「ネコの行動学」の、 ネコによるラット(ドブネズミ)補食についての記述から抜粋します。
ラットがまったく不意打ちに攻撃されたのでなく、また、すばやくえり首をとらえられたのでもなくて、まだ攻撃をまぬがれることができたときには、振り向いて、ネコに向かってキーキーと甲高い威嚇声をあげながらとびかかる。それもたいていは、相手の顔に向かっていく。これはネコの生得的解発機構に合わない。つまりネズミのこのような反応はネコに攻撃を引き起こさない。だからネコはおめおめと引き下がり、たいては逃げてしまう。「ラットに目がない」ネコでも、たいていは成長なかばのラットか、幼いラットをとらえるだけである。(中略)おとなのドブネズミが攻撃してきたときに、それを受けて立つネコはわずかにしかいない。そして闘争をあえて挑むネコですら、まずは身を守ることからはじめる。(中略)私の経験では、おとなのドブネズミをこのようにして打ち負かせるネコはとても少ないのである。
どうやら「窮鼠猫を噛む」は、特別な状況ではなく、ごく普通の出来事なようです。
今、街に増えているのは、ドブネズミやクマネズミなど大型のネズミたち。
一方、飼い猫はますます大人しく、おっとりと優しく、 穏やかな性格に改良されつづけています。その方が飼いやすいからです。
もしネズミが出ても、愛猫には期待せず、他の対策を取った方が賢明なようです。
【文例】
曲亭馬琴(1767-1848年)『南総里見八犬伝』
今日追捕せしむといへども、窮鼠還りて猫を啖(は)み、逃亡(にげうせ)て往方(ゆくへ)を知らず。
第五輯 巻之四 第四十七回 ISBN:97840030224369 page143