虎になる
とらになる
【意味】
ひどく酔う。
酔って暴れ出す。
手がつけられないくらい泥酔すること。
なぜ「虎になる」なのか、語源については色々な説があるようだ。
- 酔って四つんばいになり、手が付けられないから。
- 暴れる様子がまるで猛獣のようだから。
- 酔っぱらいは、張り子のトラのように首を左右に振るから。
- 昔酒を竹葉(ちくよう)といい、それを女言葉で「ささ」(※)といったことから、竹に虎はつきものなので。
など。
※ほかに「さけ」の「さ」を重ねたもの、等とも。なお、「小竹」と書いて「ささ」とも読み、イネ科タケササ類の小さいものを指す。
【参考文献】
『成語林』旺文社、『広辞苑』岩波書店、『大漢語林』大修館書店、『四字熟語の辞典』三省堂、ほか。参考文献の全リストはこちら
【猫的解釈】
【雑学】
虎になる話
人間が他の動物に変身してしまう物語はめずらしくないが、中でも名作だと思うのが、中島敦の 『山月記』。
李徴という一人の秀才が、なぜか虎に変身してしまう。 後日、偶然旧友と出会い、虎は身の上話をする。 それだけの、ごく短い短編なのだが、切れの良い、漢文調の文章がどっと頭にあふれて、忘れがたい刻印を残していく。 読み返すたびに、あれこんなに短い小説だったっけと意外に思うほど、強い印象を残す名作だ。
同じネコ科動物でも、猫に変身するのは、ポール・ギャリコの 『ジェニー』。 ひろく世界で読まれている猫小説である。 子供用だが、大人が読んでも面白い。
日本の小説では、保坂和志 『明け方の猫』が良い。 ああ猫だ、まさに猫だ、という気分になれる。
ところで、変身ものといえば、指摘せずにはいられないのが、カフカの 『変身 』。 ネコ科ではなく、毒虫に変身する男の話だが。 この『変身』も何回読みかえしたか知れない。 すべての和訳を読むだけでは飽きたらず、 原文(ドイツ語)や英訳文にも手を出したくらい。 それほど繰り返し読んでもなお新しい解釈を見つけられるのだからすごい。 まさに世界的名作である。