猫に九生有り

ねこにきゅうしょうあり

【意味】

猫には沢山の命があって、9回も生まれ変わることができる という迷信があることから、 猫は執念深くなかなか死なないとか、 猫は殺しても何度でも生き返るぞ、という西洋の諺。

【外国では】

(英)A cat has nine lives. 直訳:猫は9つの命を持つ。

【参考文献】

成語林』旺文社、『広辞苑』岩波書店、『大漢語林』大修館書店、『四字熟語の辞典』三省堂、ほか。参考文献の全リストはこちら

【猫的解釈】

猫の横顔

【雑学】

なぜ 「猫は九生をもつ」 なのか

以下、デズモンド・モリス著 『キャット・ウォッチング』 より引用。

なぜ、「ネコは九生をもつ」 のか

ネコの回復力とたくましさから、彼らが1回以上の生涯をもつと考えられたのは理解できるが、わからないのは、他の数ではなくて九回だという点である。答えは単純なことなのだ。古代には、九は「三位一体をあらわす三つ一組が三つ一組」になった数なので、特別縁起のいい数であり、「幸運の」ネコにぴったりだと考えられたのである。 (p179)

デズモンド・モリス博士は、 バーミンガム大学・オックスフォード大学で動物学を学び、 その後 ロンドン動物園に勤務、 またロンドン動物学会哺乳類部門の部長も務めた人物である。 著書多数、その多くは和訳されている。

では、いつ頃からこのような迷信が生まれたかについては、 J.クラットン=ブロック著 『猫の博物館』 に次のような記述がある。

 ティバー(一九八三)によると、ネコに九生ありという迷信は一五六〇年前後の、ボールドウィン作『ネコに用心』の一節から出ているらしい。「魔女はその猫の体を九度使うことを許される」というものだ。 (p.84)

野良猫は短命

野良猫の寿命は、日本でもヨーロッパでも 3年くらい、長くて4年といわれている。 野良猫の正確な統計などは取りようがないけれども、 これは多くの野良猫たちと接している ボランティア達や獣医師達の、経験による数値だ。

たとえば、飯島奈美子氏。 7年以上もの長きに渡り、毎日毎日、雨の日も風の日も、 銀座は25箇所の餌場で、100匹単位ののら猫達に 食べ物を与え続けてきた方である。

彼女の本からの抜粋。

「寿命もとても短いのです。 今までで、いちばん長生きしているのらちゃんで五年です。 ・・・でも、そんな猫は、実にまれで、たいていは 一年か二年で死んでしまいます。」

また、最近では、中国・北京での調査報告がある。 首都動物愛護協会(CAWA)が2007年に発表した 『北京市野良猫の生存状況に関する調査報告』によれば、 北京市全体には20万匹近いノラ猫がいるが、 その平均寿命は飼い猫の一般的な寿命をはるかに下回り、 わずか3年ほどと報じている。

(2008/2/28 『北京:近代化でノラ猫短命に 寿命わずか3年』中国情報局ニュース )

では猫さんの長寿記録は?

2006年版ギネスブックには、J.Perryさんの愛猫 Creme Puff ちゃん 37歳6ヶ月 (アメリカ) という記述があり、しかも本ではまだ「生存中」!その後、ネットの情報では38歳と3日で亡くなったらしい。

(最新版ギネスブックを購入していないので、 印刷物による確認はまだできていません。 ギネスブック、面白いんですけれど、 毎年購入するにはちと高すぎるんですよね・・・汗)

日本での最長寿猫は、平岩米吉氏が報告されている 「よも子」ちゃんの36歳半だろうか。

「猫に九生有り」は迷信だけれども、 野良猫たちと、これら長寿猫たちとを比べれば、 「飼い猫に九生あり」なら正しいかも知れない。 野良猫の平均寿命の3年の9倍=27年を遙かに超えて 生きているのだから!

*こちらのページもどうぞ。

猫の死亡原因

ペット保険会社の「アニコム」が発表したデータによると、 アニコムのどうぶつ健保 を死亡解約した猫335頭の 死亡原因のトップ5は、以下の通り。

  1. 感染症 20.9%
  2. 事故  11.6%
  3. 泌尿器疾患 9.5%
  4. 循環器疾患 8.3%
  5. 悪性腫瘍(癌) 6.9%

(発表:2007年4月26日)

感染症にかかった原因として、 「野外での他の猫との喧嘩や接触」が多いと分析されている。 また「事故」の多くは「交通事故および高いところからの落下によるもの」。

ところで、日本では法律でも猫の「完全室内飼育」が推奨されていることもあり (「家庭動物等の飼養及び保管に関する基準 」)、特に都市部では、 今や 猫は「完全室内飼い」が常識となりつつあある。 ましてペット保険に加入するほど猫を可愛がっている家では、 猫の完全室内飼育率は、相当高いものと思われる。 上記アニコム資料に飼育形態の調査は添付されていないので あくまで私の推測だけれども、おそらく調査猫たちの完全室内飼育率は 過半数を軽く超えていたのではないだろうか。

にもかかわらず、死亡原因の1位と2位が、 「外に出たことが原因」である率が非常に高いものとなっている。 もし「完全室内飼い」と「外出もさせている猫」とに分けて調査すれば、 外出猫の「感染症」や「事故死」の数値は数倍に跳ね上がるのではないだろうか。

*「アニコム」は他にも色々興味深いデータをリリースしています。  詳しくはサイト↓をご訪問下さい。

アニコム損害保険株式会社 http://www.anicom-sompo.co.jp/

本を枕に寝ている猫

九つの世(ここのつのよ)

キリスト教の「九つの生」と、仏教界でいう「九つの世」。似ているようですが、別物です。仏教の「九つの世」は「九界」(「くかい」または「きゅうかい」)ともいわれ、その意味は;

(1)仏教で、十界から仏界を除いた九つの世界の意。地獄・餓鬼・畜生・阿修羅 (あしゅら) ・人間・天上・声聞 (しょうもん) ・縁覚・菩薩 (ぼさつ) の九界。

(2)欲・色・無色の三界を九つに分けたものの総称。

「猫に九生有り」は西洋由来のことわざですから比較的新しい言葉ですけれど、仏教の「九つの世」はもっと古くから日本人に使われていました。

「(前略)冥土(よみぢ)もおなじ独行(ひとりたび)、かうなる事も二親の、非義非道とはいふものから、汝(なんぢ)が悪の資(たすけ)に成れり。九ッの世をかゆるとも、つきぬ怨(うらみ)は後(のち)つひに、その身に報(むくは)ざるべきか。(後略)」

曲亭馬琴(1767-1848年)『南総里見八犬伝』第三輯 巻之四 第二十八回 ISBN:9784003022429 page137

※【参考】「九品浄土(くほんじょうど)」、「九品の浄刹(くほんのじょうせつ/じょうさつ)」

猫の九生を扱った小説など

高橋由太(たかはし ゆた)に『九回死んだ猫』という短編がある。すでに8回生きて、9回目の生を江戸時代の江戸で暮らす猫の、優しく、せつない小品である。

もう一冊。佐野洋子『100万回生きたねこ』。こちらは9生どころか100万回もいきた猫の話。どこの本屋にも必ず売っている、超有名な絵本だ。詳細は下記ページに。

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