鯨寄る浦、虎伏す野辺/虎伏す野辺、鯨寄る浦
いさなよるほ、こふすのべ
とらふすのべ、いさなよるうら
【意味】
野生の虎が生息する野、鯨が泳ぎ寄ってくる海辺の意から、人跡稀な土地、未開な土地のこと。
【参考文献】
『成語林』旺文社、『広辞苑』岩波書店、『大漢語林』大修館書店、『四字熟語の辞典』三省堂、ほか。参考文献の全リストはこちら
【猫的解釈】
さいきんはね、「金魚寄る水槽、虎猫伏す窓辺」って言うそうにゃよ。つまり、これは、とても幸せな家庭をしめす諺になったのにゃ。
トロが首に巻いているのはピンクのトイレレットペーパーです。
【雑学】
クジラについて
クジラは大きく分けると次の3つに分けられる。
- ムカシクジラ亜目(絶滅)
- ヒゲクジラ亜目
ナガスクジラ、ホッキョククジラ、ザトウクジラなど。 - ハクジラ亜目
マッコウクジラ、シャチ、マイルカ、イッカク、スナメリなど。
●イルカは生物学的にはハクジラの一種。 慣用的に、体長4m以上をクジラ、それ以下をイルカと呼ぶ。
●シロナガスクジラは地上最大の動物。 最大体長33m以上、体重約190トンという記録があるという。 平均サイズは24~27mくらいで、雌の方がやや大きい。 新生児のサイズは7m、体重約2.5トン。 さすが巨大な赤ちゃんではある。 学名Balaenoptera musculus.
●マッコウクジラは驚異の潜水能力を持っている。 わずか8分で1000mの深さまで潜り、好物のダイオウイカを捕食する。 解体記録によれば、マッコウクジラの胃の中から 深海にしか棲まないサメが出てくることがあり、 それから推測すると、マッコウクジラは少なくとも 3000mの深さまで潜水可能であるらしい。 またマッコウクジラは現生するクジラ類の中で 一番古くから生息していたらしく、 中新世(2500万年前~500万年前)の地層から化石が発見されている。 学名Physeter macrocephalus.
●海から川に戻ったカワイルカ達。 ガンジスカワイルカ、インダスカワイルカ、ヨウスコウカワイルカ、 アマゾンカワイルカと、それぞれの名が示す通り 大きな川に生息している。
今世紀に入って、ヨウスコウカワイルカはおそらく絶滅した。 他の種も数を減らし、危惧されている。 彼らの特徴は視覚がほとんど退化してしまっていること。 そのかわり、エコロケーション能力が高度に発達した。 なお、ラプラタカワイルカは浅い海に住むカワイルカで、 生息地はラプラタ川河口およびその近海。
●日本でホエールウォッチング(鯨観察)の名所といえば:
- 室蘭沖(北海道)
ミンククジラ、コビレゴンドウ - 小笠原沖(東京都)
ザトウクジラ - 室戸沖(高知県)
ハナゴンドウ、コビレゴンドウ、マッコウクジラ - 座間味沖(沖縄県)
ザトウクジラ
【参考文献】
- 『クジラはなぜ優雅に大ジャンプするのか 』 中村将行著 実業之日本社
- 『クジラとイルカの図鑑―完璧版 (地球自然ハンドブック) 』 日本ヴォーグ社
文例
御伽草子『浦島太郎』
太郎は、泣く泣く、草深く露しげき野辺を分け、古き塚に参り、涙を流し、かくなん、
かりそめに出でにし跡を来てみれば虎臥す野辺となるぞ悲しき
小学館日本古典文学全集36『御伽草子集』page422
【口語訳】大島建彦
(浦島)太郎は、泣きながら、草深く露のいっぱいおりちゃ野原を分け入り、古い塚に参り、涙を流し、このように
かりそめに・・・(ほんの一時と思って出てしまったその跡をたずねて来てみると、虎のすむような荒れ果てた野原となっているのは悲しいことだ)
御伽草子『鉢かづき』
「(前略)鯨の寄る島、虎臥す野辺、千尋(ちいろ)の底、五道輪廻(ごだうりんゑ)のあなたなる、六道四生(ろくだうししゃう)のこなたなる、妹背(いもせ)の川の水上の、涅槃(ねはん)の岸や変るとも、君とわが中変らじ」と、深く契りをこめ給ふ。
小学館日本古典文学全集36『御伽草子集』page90
【口語訳】大島建彦
鯨の寄る島、虎の臥す野辺、千尋の膿の底、五道輪廻のあちらの、六道四生のこちらの、夫婦の川の水上に当たる、涅槃の岸は変わっても、あなたと私との仲は変わるまい」と、深く契りをこめられる。
御伽草子『梵天国』
「(前略)梵天国のならひにて、人に契りを結び、またと契りかなはず。情(なさけ)なくも、かかる仰せを承るこそ愚かなれ。虎臥す野辺、火の中水の底までも、おくれ奉るまじきなり。(後略)」
小学館日本古典文学全集36『御伽草子集』page338
【口語訳】大島建彦
梵天国のならわしでは、人と契りを結ぶと、ふたたびほかに契りを結ぶことはできません。情けないことに、このようなお言葉をうかがうとはあまりのことです。たとえ虎のすむ野辺、火の中、水の底までも、あとにお従い申すつもりです。