猫を被る/猫被り
ねこをかぶる
ねこかぶり
【意味】
見かけは大人しい猫のように、特定の前では本性を隠して大人しくしているたとえ。
表面的には柔和な顔つきをして穏やかに振る舞うたとえ。
また、事情などを知っているのに、とぼけて知らないふりをするたとえ。
*「猫」については、「ねこ=わらで編んだむしろ」をかぶる意、とする説もある。
猫が猫をかぶる・・・笑
【類】
仮面を被る かめんをかぶる
皮を被る かわをかぶる
【参考文献】
『成語林』旺文社、『広辞苑』岩波書店、『大漢語林』大修館書店、『四字熟語の辞典』三省堂、ほか。参考文献の全リストはこちら
【猫的解釈】
そうだね。猫が猫を被る必要はないね(まして本物の猫を)。
大人猫は子猫のやんちゃにはかなわないようです (^o^)
【雑学】
浮世絵に描かれた猫諺
江戸時代の浮世絵師、歌川国芳による『たとえ尽(つくし)の内』という画に、 猫のことわざが描かれている。 国芳はほかにも多数の猫画を残した。
- 猫を被る
- 猫に鰹節
- 猫に小判
- 猫の尻に才槌(さいづち)
【歌川国芳(うたがわ くによし)】
1797-1861年。浮世絵師。号は一勇斎・朝桜楼。初世歌川富国の門人。
武者絵・風景画・戯画に長じた。門人に、月岡芳年・落合芳幾・河鍋暁斎その他多数。
大変な愛猫家で、何頭もの猫を飼い、亡くなれば必ず戒名をつけ仏壇に祭ったという。 また、自身を絵に描きいれるときは、顔を出さなくても隣に猫を置くことで それが自分であることを示したり、本来の画号を使えない艶本には、 「猫」の文字を入れた号をつかって「私だよ」と暗示した。
【猫を被る:文例】
熊谷達也『邂逅の森 』
「なんだよ、気色悪わりい喋り方しやがって」
ISBN:9784167724016 p.322
小太郎が侮蔑を滲ませた声を投げつけると、意に介した様子もなくイクは笑った。
「なに言ってるね、あたしはいつもこうさ。小太郎、あんた、よけいなことを富治さんに吹き込んだら、ただじゃおかないからね」
「へっ、猫をかぶりやがって」と言ったあとで、小太郎が富治の耳に囁く。「姉貴の奴、さっそく兄貴に媚を売りはじめてる」
浅田次郎『赤猫異聞』
手を握られましたとき、ああこの男は遊びを知らんなあと思いました。殿方のそうした本性と申すものは、見たきり話したきりではわかりません。遊び人ほど猫を被っているものでございますからね。でも、肌が触れたとたんにピンとくる。
ISBN:978410109277 p.120