虎豹豈犬羊の欺きを受けんや
こひょうあにけんようのあざむきをうけんや
【意味】
虎や豹のような強い獣は犬や羊などには騙されない、転じて、徳のある者は凡人などにあなどられることはない、という意味。
【参考文献】
『成語林』旺文社、『広辞苑』岩波書店、『大漢語林』大修館書店、『四字熟語の辞典』三省堂、ほか。参考文献の全リストはこちら
【猫的解釈】
猫は、人間にゃんかに騙されない、って意味だよ。猫なで声を出しても無駄にゃ!
↑猫ちゃん、触らぬ神に祟りなしだよ~ カメムシは臭いから、そうっとしておこうね?
【雑学】
出典
『故事成語考こじせいごこう』鳥獣ちょうじゅう
『偉大なる王』 とアカシカ
『偉大なる王(ワン)』 という名作がある。 著者はロシア人の ニコライ・A・バイコフ(1872-1958)。
王(ワン)は、一頭の巨大なアムールトラ。 その王と、森に住む動物たちを、生き生きと描いた作品である。
『偉大なる王』 の中に、トラである王がアカシカの鳴き声を真似るシーンがある。
“ローガリ”と言う名の、老練な牡アカシカが、群れを率いていた。 そこへ、五歳牡に率いられた小さな群れが通りかかる。 老アカシカは五歳牡を打ち破り、牝達を奪い取って、自分の群れに凱旋した。
ところが、老アカシカが留守の間に、牝の一頭が、 別の牡(四歳牡)と駆け落ちしてしまっていた!
怒った老アカシカ、若いカップルを追いかけるが、見失ってしまう。 仕方なく、自分のハーレムに引き返そうとしたとき、四歳牡の鳴き声が聞こえた。 老アカシカは猛然と声のした方へ走り出す。
老ローガリは岩や風倒木を飛び越えて、あまりひろくない草地に出た。草地の真ん中にあらしで倒れた巨大な紅松が横たわっていた。この巨木を飛び越えたのが、彼の長い生涯での最後の跳躍となった。木の向こう側に偉大なる王が待ち伏せていたのである。
アカシカが風倒木を飛び越えた瞬間、王が襲いかかった。
(中略)
王は以前から、アカシカの鳴き叫ぶ声がなにを意味しているか、知っていた。そこで、若い牡アカシカの鳴き声をまねて、略奪者を追跡するローガリをおびき寄せたのである。
トラが騙されるどころか、鳴き声を真似てアカシカを騙す話だ。
バイコフは、ペテルブルグ学士院の命で、満州の自然や野生動物たちを調査。その後、ロシア革命で満州に亡命。 山々を歩きまわり、目で見、肌で感じた自然を、いきいきとした文学作品に残した。