猫は虎の心を知らず
ねこはとらのこころをしらず
【意味】
外見は似ていても、猫には虎の心がわからない。
小人物には、大人物の考えは理解できないというたとえ。
【参考文献】
『成語林』旺文社、『広辞苑』岩波書店、『大漢語林』大修館書店、『四字熟語の辞典』三省堂、ほか。参考文献の全リストはこちら
【猫的解釈】
【雑学】
『猫の草子』=虎が小型化して猫に?
『御伽草子(おとぎそうし)』は、婦女童幼の読み物として、 遅くとも江戸時代の中期までにまとめられた物語集である。
その中に『猫の草子』という話がある。
それまで紐に繋がれて大事に飼育されることが多かった猫たちが、おふれにより、紐から放たれた。 猫たちは ネズミ退治に精を出し、京の人々は大喜び。
ネズミたちは困惑し、尊いお坊様になんとかしてくれと直訴する。
すると翌日には早速「虎毛の猫」があらわれて、今度は猫の言い分を直訴する。 その中で猫は自分のことをこんな風に言っている。
「われは、これ、天竺唐土に恐れをなす、虎の子孫なり。
日本は小国なり、国に相応して、これを渡さるる。
その子細によって、日本に虎これなし。・・・」(口語訳)
「自分は、あの、インドや中国で恐れられている、虎の子孫です。
日本は小さな国ですから、体もそれ相応にして、渡来しました。
そういう事情ですから、日本には虎がいないのです。・・・」
お坊様は猫とネズミの両方の話を聞くが、特に何をするでもなく、結局ネズミたちは、もっと安全な地へ引っ越していく。
「猫殿だって、犬に追いかけられて無惨な姿をさらすことだってあるんだし。 鼠とる猫のうしろに犬のゐて狙ふものこそ狙はれにけり」
と捨て台詞(捨て和歌?)を残しながら。
【参考文献】
●『日本古典文学全集36 御伽草子集 』 小学館