虎に翼/虎に羽/虎に角/獅子に鰭
とらにつばさ
とらにはね
とらにつの
ししにひれ
【意味】
そうでなくとも強い虎や獅子が、さらに鳥の翼や魚の鰭を得れば、空や水の中でも力を発揮できるようになり、ますます強くなる。
勢力のある者が、さらに別のものを加えて、いっそう勢力のある者になること。
もともと実力のある者に、さらに力がそなわることのたとえ。
【類】
鬼に金棒 おににかなぼう
【参考文献】
『成語林』旺文社、『広辞苑』岩波書店、『大漢語林』大修館書店、『四字熟語の辞典』三省堂、ほか。参考文献の全リストはこちら
【猫的解釈】
トラ猫が翼を得て大群で飛んできたら大変だ・・・!!
【雑学】
出典
『韓非子(かんぴし)』(虎に翼)
周書に曰く、「虎の為に翼を傳(つ)くる母(なか)れ、将(まさ)に飛んで邑(むら)に入り、人を択(と)って之(これ)を食(くら)わんとす」と。夫(そ)れ不肖(ふしょう)の人を勢いに乗するは(=愚かな者を権勢の位につけるのは)是れ虎の為に翼を傳くるなり。
連続テレビ小説「虎に翼」
2024年(令和6年)前期のNHK連続テレビ小説 第110作。
【放送予定】
2024年春
【制作スケジュール】
2023年秋 クランクイン予定
【作】
吉田恵里香
【スタッフ】
制作統括:尾崎裕和
プロデューサー:石澤かおる
取材:清永聡
演出:梛川善郎 安藤大佑 橋本万葉 ほか
主演は伊藤沙莉さん。モデルは日本初の女性弁護士、三淵嘉子(みぶち・よしこ)さん。以下、NHK公式サイトより引用。
三淵嘉子さん(1914-1984)は、明治大学専門部女子部法科で学び、昭和13年(1938)に高等文官試験司法科に合格、日本で初めての女性弁護士の一人となります。戦後は、それまで女性への門戸が閉ざされていた裁判官への任官を目指し、裁判官採用願を司法省に提出。すぐには採用されず司法省で民法の改正と家庭裁判所の設立に携わります。そして昭和24年(1949)に裁判官となり、後には女性として初めての裁判所長も務めました。
https://www.nhk.jp/g/blog/55ndoi7fvs/
大型ネコ科に翼といえば
美しい女性の顔と胸、ライオンの胴・足・尾、さらに鳥の翼を持つギリシア神話の怪物といえば、スピンクス。 非常に古い時代にエジプトのスフィンクスがギリシアに伝わったとされる。 女神へーラーの命を受けてテーバイの西の山に陣取り、通りかかる人間に謎々を出しては、答えられないと取って食った。
その有名な謎々とは
「四本足、二本足、三本足があって、足の多いほど弱いのは何か。」
または
「朝は四本足、昼は二本足、夜は三本足で歩く動物は何か。」
誰も解けなかった謎を、オイディプスが見事に答えた。
「それは人間だ。子供の時は両手両足で這い、大人になると二本足で歩き、年寄りになると杖にすがる。」
謎を説かれたスピンクスは崖から身を投じて死んだとも、オイディプスによって退治されたとも伝えられる。
スピンクスからテーバイを救った功績で、オイディプスは、王妃イオカステーと結婚してテーバイ王となる。 が、その後、恐ろしい運命の悪戯により、妻イオカステーは実はオイディプスの実母であり、昔三叉路で殺した老人はオイディプスの実父であったことが知れる。 事実を知ったオイディプスは絶望して我が両目をくり抜き、イオカステーは自ら縊れて死ぬ。
精神分析学を広めたフロイトは、このオイディプス神話から、父親と敵対し母親に理想を求める男の子の心理を「エディプス・コンプレックス」と名付けた。 逆に、父親に憧れ母親を憎悪する娘の心理は「エレクトラ・コンプレックス」と呼ばれる。
これじゃあ、真っ赤な鼻のトナカイさん
山岸凉子の『スピンクス』
上でスピンクスが出たついでに(汗)
漫画家・山岸凉子の短編『スピンクス』。 私が持っている本では、文春文庫ビジュアル版 「ハトシェプスト」に 収録されている。 母親に追いつめられる息子の、極限の心理状態を独特なタッチで鋭く描く。
ここではスピンクスはグラマラスでエロティックで肉感あふれる怪物として描かれている。 また「紙」たちの存在も恐ろしい。 あまり書くとネタバレになるので書けないけれど山岸凉子氏ならではの、鬼気迫る心理描写だ。
このマンガを読むときは、ギリシア神話のスピンクス(ピラミッドと並んで座っているスフィンクスではなく)や、それを退治したオイディプス、さらに、フロイトによる エディプス・コンプレックスの事などを知らないと、作品の深みを理解できないと思う。 機会があればぜひ読んでください。
【参考文献】
●『ギリシア・ローマ神話辞典 』 高瀬春繁著 岩波書店
●『幻獣辞典 』 ボルヘス/ゲレロ著、柳瀬尚紀訳 晶文社
●『スピンクス』 山岸凉子 文春文庫ビジュアル版「ハトシェプスト 」収録
さらに蛇足
翼を持った猫をテーマにした本。
文例
曲亭馬琴(1767-1848年)『南総里見八犬伝』
犬塚信乃、犬山道節は、知勇兼備の俊傑(すぐれびと)なるを、君の知し召所(めすところ)なり。今は其党都(そのともがらすべ)て八人、皆里見に相仕へて、重用大かたならずと云、こも風聞に紛れ候はず。然(さ)らば是(これ)、虎に翼を添えたると如き、勍敵(きょうてき)に候を、管領烏合の衆をもて、伐滅(うちほろぼ)さまく欲するとも、いかにして克(かつ)よしあらんや。
【口語訳】犬塚信乃、犬山道節は、知勇兼備の優れた人物であることは、主君もご存じの通り。今はその優れた仲間すべて八人、皆里見(義実)に仕えて、重用されているということ、これも話に聞いて間違いない。であればこれは、虎に翼を添えたが如き、強敵であるのに、管領の烏合の衆をもって、彼らを撃ち亡ぼそうと欲するとしても、どうして勝つことができよう。
第九輯 巻之三十五上 第百五十九回 ISBN:9784003022498 page116